－シニア夫婦の旅－ 満点の星空を、島の特等席で

静かだ。
どこそこの数珠つなぎの
観光地とはえらい違いである。
世界遺産の地を妻と二人。
厳かな石造りの教会の前で、
穏やかな時を過ごした。
おい、教会の中にも入れるのか。
隠れキリシタンも今はオープンだな。
こんな辺境の地に身を潜め、
信仰を守り抜くとは相当な覚悟。
初志貫徹。私も信念を貫き、
昼飯は海鮮丼に決めた。

教会からの帰り道、集落を散策。
歴史を感じる石畳の道を
奥へ奥へと登っていく。
「この辺りは昔、採石場でね。
あの石造りの教会もこの石を…」
ガイドさんから聞いた話を、
さっそく自慢げに話す夫。
夫が譲れないというので、
お昼は海鮮丼をいただくことに。
産地直結の醍醐味を存分に満喫する。
「午後は、高台で景色を眺めよう」
スケジュールを気分で決める旅も新鮮。

島なのに山。だからどこの眺めも絶景。
妻と相談し、午後は高台で過ごすことに。
旅先では、移動に迷わないのが鉄則。
オーダーメイドタクシーは大正解であった。
何もしない時間とこの景色、なんて贅沢。
妻は読書に明け暮れ、私は写真を撮ったり、
ぶらぶら散歩をして楽しんだ。
充実していると、時間が経つのも早い。
気がつけばあっという間に夕暮れ。
それにしてもこの夕陽、幻想的すぎる。
「ずっと眺めていたいわね」
久しぶりに妻と気持ちが一致した。

静かに過ごすには、ホテルより旅館。
私の提案で、宿はすんなり決まった。
窓からは、自然の音しか聞こえてこない。
塩の香りも都会の海とはまったく違う。
まったり癒されるだけの時間を満喫。
同世代の宿泊客がこんなに。
みんな考えていることは同じだね。
「そろそろ出かけるぞ」
楽しみにしていた星空ツアーへ。
リクライニングチェアーに身を沈め、
島の特等席で満点の星空を鑑賞。
上五島の夜は、静かに更けていきました。